電家製品に仕掛けられた時限爆弾 [日常茶飯事]

Canon PowerShot S3 IS
昨年の今頃書いた記事 『電気製品は時限爆弾を仕掛けられたようにして』 の2008年版である。
昨年サンタクロースに御願いしたものは、一年掛けてほぼ成就したといっても過言ではない。
叶わなかったものは、液晶モニター(WUXGA対応 フルスペックハイビジョンディスプレイ)位のものだろう。
これは15万位もするものだから仕方無いが、最新パソコンVistaを購入できたのは、ひとえに壊れかけの電子オーブンレンジさま様である。
その電子オーブンレンジであるが、一年経った今でもなんとか動いているのである。
レンジ庫内の電球が破裂していて、中は真っ暗闇で回転皿が廻っているのかも分からない。
おまけに、下に置いてある炊飯器が炊き上げる水蒸気で、突然ブーンと動き出すという末期状態である。
そのことを彼女に相談されても、「しょうがないだろう、もう寿命なんだから、新しいの買う気なんでしょ」 と日ごろから尻が重い亭主である。
だが、彼女がパソコンの購入資金に 「オーブンレンジのお金を使ってもいいわよ」 と言われたとたん、電光石火のごとく台所の片隅を片付けだし、そこに炊飯器を置いたのである。
炊飯器と別々にされたことで、レンジの誤作動はなくなった。
亭主にしてみれば、いま、電子オーブンレンジに機嫌をそこなってもらっては困るのだ。
少しでも長く、元気にしてもらわねば、その邪(よこしま)な願いが通じたのか、真っ暗闇の中で必死に皿を廻している。
そんな健気な電子オーブンレンジのことを思うと、あふれ出る涙を抑えきれない亭主であった。
しかし、電子オーブンレンジと引き離された炊飯器の方に異変が現れたのは、それから暫く経ってからだった。
「最近ご飯を保温状態にしておくと、すぐに臭くなってしまうのよね」 と彼女が言った。
一日に一度か二度、自身の湯気を電子オーブンレンジの懐奥深く忍ばせ、肉体(部品)の性感帯をやさしく撫でまわし、脳内(電子回路)に快感を覚えさせ、恍惚の桃色吐息(誤作動)をあげさせるのが、炊飯器の唯一の楽しみだったのである。
どうも電子オーブンレンジと引き離されたことによって、炊飯器は精神的に腐ってしまったようで、ご飯を臭くすることで「もうやってられない」感をあらわにしていたようである。
このことに甚(いた)く感じ入った亭主は、今まで以上、意味もなく彼女のからだを触る回数が増えていくのであった。
彼女のからだに触らないと、炊飯器のように腐ってしまうのではないかと思うようになったのである。
いくつになっても性的な感覚を忘れてはいけないという、重大な暗示であると解釈したのであった。
そのたびに彼女から掌を叩かれたり、つねられたりしているが、一向にめげない。
老体に鞭打たれ、まだ働かされる電子オーブンレンジと意味もなく触られる彼女にとっては、亭主の色と欲に振り回される迷惑きわまりない話だったのである。
不機嫌な愛人 chapter 1 [ぱそこん]

CASIO W31CA
どうして機嫌が悪いのか。
もう君の心の内を察してまで、分かろうとは思わないんだ。
君のわがままに付き合えるほど、僕は若くは無いしね。
出会ってからずっと振り回されっぱなしで、ずいぶんと長い間、機嫌を取ってきたよね。
きみの魅力には、まだまだ余裕があると思っていたからなんだ。
でも、もうこれで、終わりにしよう。
すねられるたびに情熱を燃やした日々もあったけれども、機嫌を伺ってる時間、ぼくは何かを失ってしまったようだ。
ぼくは、もうすでに新しい旅立ちを決めたんだ。
別離を決めた途端、少しだけ調子が良くなり始めたWindowsXPパソコンなんですが。 数年前、中国大陸から、はるばる船に乗ってやってきた。
手元に届いたWindowsXPパソコン。 一週間もしないうちに、”ようこそ”と、ご挨拶をしたっきり黙りこくってしまった。
1ヶ月もしないうちにクリーンインストールされて、まっさらな身体になったというのに、一週間もしないうちに、”ようこそ”と言ったきり、ふたたび黙り込んでしまった。
電源を入れて”ようこそ”画面にたどり着くまで、
「あたい、飲みすぎちゃったみたいで、お昼前にゃ起きられないのよ。 出来りゃ、明日にしてくんない」
低血圧の娼婦が朝、起こされたときのようで、ダラダラと時間がかかる。
周りの人に聞いても、WindowsXPは調子が良くて、「起ち上がるのに10~15秒くらいだよ」と聞いた亭主は、慌てふためいてしまった。
あたふたしながらも情報収集し、四方八方手を尽くした結果、XPのバグだと解かったのは、数週間後のことであった。
Updateすれば解決がつくのだが、当時の亭主は、パソコンを組み立てることは出来ても、メールすら出来ないほどの通信音痴だった。 前のWindows98パソコンなどは買ってから、一年以上もネットに繋げてなかったくらいである。
初めてネットに接続させるのに、四苦八苦した痛い記憶だけが残っており、接続の仕方は相変わらずチンプンカンプンで、XPには接続してなかったのである。
そこらへんの底の浅さが露呈してしまったのか、XPパソコンと亭主との主従関係が、そのときから逆転してしまったのだと思われる。
「お前はエリカ様か!!」
思わず激高して叫んでしまった。
いったい何処が悪くて不機嫌なのか、一向に答えようとしない。
後田(あとだ)君の息子の駿太郎でも、お腹が痛いとか頭が痛いとか、ちゃんと言えるぞ。
「駿太郎くん。 喉の奥は痛くないのかな?」と、お医者さんに訊ねられて、
「痛くない!」とキッパリ、駿太郎くんは答えられたぞ。
でも、診察が終わった待合室で、
「おとうさん、”のどのおく”ってなに?」って後田君に質問したそうだ。
首は知っていても、喉は知らなかったみたいだぞ。
未就学児の駿太郎でさえ、その場の空気を呼んで大人に手間は取らせまいと、こころ配りしているってのに、なんて奴なんだ、お前は。
起動させるたびに、ダラダラとchkdskを繰り返している。 それも一回や二回ではない。
前回も前々回も同じ症状が出たのだが、その時はまだ、system32が痛いだのofficeが骨折して熱を持っているなどと、しおらしく訴えていたのだが、今回は無言のまま、ほっとけば、いつ果てるともなく続くのであった。
前回も前々回も部分的な修復を試みたのだが、一時的には良くなるものの、またすぐに悪化してしまう。 結局、高度な医療技術を持たない藪医者にとっては、クリーンインストールするしか方法がないのである。
前回のクリーンインストールから、まだ一年も経っていない。 よほど根本的なところに、重大な欠陥があるのか、ウイルスソフトでも駆逐出来ない新型ウイルスに、蝕まれているに違いない。
ファイルやソフトの起動も遅いのだが、Internet Explorerの起動の遅さには閉口する。 光の恩恵をまったく享受していない。 前世紀のISDNの世界に等しいのである。
なにしろ会社にある、二時間ごとに固まる旧石器時代のCeleron 400Mhz、あるいは自慢の自作機1.4Ghzで総制作費2万7千円の愛称「アオ」の方が、断然早い。 双方とも、Win98機なのである。
不機嫌な愛人 chapter 2 [ぱそこん]

Nikon COOLPIX 4300
「あれ、わたしのファイルが無い?」
妻である彼女の怪訝な声を、隣りの部屋で聞いた。
その日は年賀状制作のために彼女と長女にパソコンを占領されていた。
パソコンを占拠されてしまった亭主は仕方なく、コタツを甲羅のように背負いながら、お笑い番組を観ていたのだが、甲羅から這い出ると、太った胴体をくねらせコモドオオトカゲのように、ノソノソと四つん這いで隣りの部屋に向かった。
パソコン机は和式である。 だが、トイレは洋式である。
自慢のオーダーメイドである。 もちろん自分自身にオーダーしたので、自作の机ということになる。
コタツから隣りの部屋のパソコン机まで、立たずに這って行け、そのまま座椅子に座れるっていう優れもの。 太って立つのが億劫になってしまったコモドオオトカゲにとっては、親切設計、バリアフリー感覚はおおきな利点である。
彼女と娘の間に頭を割り込ませると、おもむろにマウスに手を伸ばしモニターを覗き込む。
それまで、マウスに手をやっていた長女の手の甲に触れると、爬虫類に触られたかのように「パッ」と手を引いた。
ちょっと「ムッ」としたが、完全にコモドオオトカゲに成りきってるようで、ひとり悦に入っている。
わざと嫌われる事をしたり、ちょっかいを出したりして娘の気を引こうとする、もてないイジメッ子オヤジ心理である。
コモドオオトカゲというよりは、子供オオトカゲと言われている。
子供のくせに大きいのだ。・・・・・いろいろと・・・・・。
それはさておき、確かに、彼女の名前を冠したフォルダーが、あるべきはずのHDDの中から消えていた。
隈なく探してみたのだが、彼女のフォルダーだけが忽然と無くなっていたのである。
だが、それだけではない。 スタートメニュー→プログラムの中のアイコンがほとんど消えてなくなっている。 昨日までやっていた「ソリティア」「フリーセル」というゲームも無くなっている。 このゲームが無くなっていることも問題である。
このパソコンはもともと、彼女と非常に相性が悪い。 彼女がパソコンを使う最大の目的は、家計簿ソフトの「ゆとりちゃん」を使うことにある。
初代のパソコンでは「ゆとりちゃん」はちゃんと動作していたのだが、このパソコンに移し、暫らくして挙動不信になったのである。 データーが読み込めなかったり、保存できなかったりしたのだ。
八方手を尽くしてみたのだが、理解を超えた。
暖かい日の当たる南向きの部屋で、家計簿を付けてから「ソリティア」「フリーセル」などのパソコンゲームをするのが、彼女の日課であり至福の時でもあった。
そんな彼女のささやかな楽しみを奪うかのようにして、このパソコンは「ゆとりちゃん」を追い出してしまったのである。
行き場を失った「ゆとりちゃん」。 ゆとりとは名ばかりで、すっかりゆとりを無くした「ゆとりちゃん」。
追い詰められた者たちの向かう先は、北の方角と相場が決まっている。 ご多分に漏れず、「ゆとりちゃん」も北へと向かったのである。
不機嫌な愛人 chapter 3 [ぱそこん]
Canon PowerShot S3 IS
そこは、「長男の部屋」とは名ばかりの極寒の地、北向きの四畳半。 木枯らしが吹き荒れた後の吹き溜まりのようでもあり、寒風吹きすさぶ荒波に打ち上げられた、おびただしい不法投棄の数々。
部屋の隅には万年雪のように積もった埃。 永久凍土に覆われた部屋の隅を掘り起こせば、冷凍マンモスやシーラカンスの化石が発掘できそうである。
最近、調査にあたった彼女の報告によれば、黒いものは白カビが生え、より白く。 白いものは黒カビが生え、より黒くなっていたらしい。 それらの物は、マンモスやシーラカンスに匹敵するくらいの年代物であったが、価値はまったく無かったらしい。
そんな北の地に追いやられ、息子のパソコンに移植されてしまった、家計簿ソフトの「ゆとりちゃん」。
我が腹を痛めて産んだ、可愛かった息子とはいえ、今ではワガママ王子と異名の付く長男。
その男臭い部屋で、家計簿を付けなければならなくなった、彼女の胸中はいかばかりか。
大奥の権力闘争に敗れてしまい、側室に、追い出され幽閉されてしまった、正室の心境だったに違いない。
それでも、「ゆとりちゃん」が無くなったあとも、家計簿を付けない日には南向きの窓辺で、流氷に乗って流れ着いた『ごまふあざらし』のように、座椅子にもたれかかり、パソコンゲームだけを楽しむのが彼女にとって、幸せなひと時であった。
そんな、暖かい陽だまりの中での、楽しいひと時までも奪うかのように、WindowsXPパソコンは、「フリーセル」「ソリティア」のゲームをまでも、勝手にスタートメニューから捨て去ってしまったのである。
これには、彼女も相当に激怒した様子である。
それが証拠に亭主が、何気なくもらした 「最近、パソコンの調子悪いから、買い換えようかな」 のつぶやきに、
「いいわよ」 の即答の返事である。
「えっ!!」 予期せぬ答えに聞き返してしまった亭主である。
「だってこの前、『そんなお金がどこにあるの。パソコンより電子レンジが先でしょっ!』 って言ってたじゃないか、そんなお金がどこにあるんだ?」
「大丈夫よ。電子レンジが壊れそうだから、少しずつ貯めておいたの。まだ完全に壊れていないから、そのお金使っていいわよ」
電子レンジ様様である。
内部の電球が破裂して真っ暗闇のなかで、回転しているのかどうかも分からない。下に置いてある炊飯器のご飯が炊き上がる水蒸気で、誤作動して動き出してしまうという末期状態であるにもかかわらず、彼女にとって必需品であるオーブンレンジを諦め、パソコンの買い替えを選んだのである。
最近、周囲のWinXPオーナー達から、パソコンの調子が奇怪(おか)しいと度々聞くようになった。 もしかしたら、WindowsVistaを購入させるための某組織の陰謀ではないかと勘ぐってしまう。
某組織の陰謀であったとしたら、断固として ・・・・・・・・・
逆らう事はできない。 いつの世も、お代官様と越後屋には勝たれない、「長いものには巻かれてしまえ!」主義である。
不機嫌な愛人 chapter 4 [ぱそこん]

OLYMPUS CAMEDIA SP-570UZ
そんなわけで、彼女の気が変わらないうちに新しいパソコンを決めてしまおうと、日夜仕事もそっちのけで、比較検討をし始める亭主であった。
初めて購入したパソコンは、当時日本に上陸していた米国の某会社の製品で、BTO[build to order]という受注生産システムをとっていた。
その当時亭主は、舶来品にステータスを感じていて、パソコンを買うなら米国産がカッコイイだろうと思っていた。
たぶん神奈川県で組み立てをしていたと思うが、製品としては別段困ったことも無かった。
だが、その某会社は突然日本から撤退してしまったのである。
不具合が出ても、その会社に頼るわけでもなく、自分で直していたからどうでもよい事なのだが、なんだか見捨てられたみたいで、南極にとり残されたタロー・ジローの気分になってしまった。
その製品もスペック不足となって、新しいパソコンということになったが、まだ亭主の中には舶来神話みたいなものがあった。
某社が撤退したその後に頭角を現して来ていたのは、同じく米国の某某社である。
ほとんど迷わず、その某某社の製品を購入した。
それが、この『不機嫌な愛人』なのである。
食の安全が叫ばれる昨今、輸入品には消費者の厳しい眼が向けられている。
米国籍で中国で生産されたとなると、不機嫌な理由はそこにあるんじゃないかと、勘ぐってしまう亭主であった。
すっかり輸入品に不信感を抱いた亭主は、純国産品に限ると決意するのであった。
初めてのパソコンを購入するとき、勉強のために沢山のパソコン雑誌を読んだ。
なにしろ、それまでパソコンなどに興味が無かったから、すべてがチンプンカンプンである。
そんなパソコン雑誌の後ろのページには、怪しげな聞いたことも無いパーツショップや、国内のBTOショップの広告が何ページも掲載されていた。
ド素人が決して手を出してはいけない、手を出したらオオヤケドを負うことになる雰囲気があった。
だが当時から、その怪しげな国内BTOショップのなかに、何故か気になるお店があった。
秋葉原とかではなく、関東平野のある地方の街にそのお店はあり、それが一層の不安感を抱かせ、気にはなっていたが手を出すことは無かった。
それが、”ねずみコンピューター”である。








